マルグリット・ユルスナール (Marguerite Yourcenar)ってどんな人?

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マルグリット・ユルスナール (Marguerite Yourcenar)の生い立ちと経歴

マルグリット・ユルスナール(Marguerite Yourcenar)は、20世紀を代表するフランスの作家の一人であり、詩人、小説家、エッセイストとして知られています。

1903年6月8日にベルギーのブリュッセルで生まれました。彼女の本名は、マルグリット・アンテリエム・クレメンス・ミシェル・ド・クレヴェクール(Marguerite Antoinette Jeanne Marie Ghislaine Cleenewerck de Crayencour)で、父親はフランス貴族の出身で、母親はベルギーの上流階級の家庭出身でした。彼女はベルギー、フランス、アメリカ合衆国で育ち、多言語に堪能でした。

ユルスナールは、パリ大学で文学を学び、1939年に博士号を取得しました。1930年代には、自身の詩集『Les Dieux ne sont pas morts(神々は死んでいない)』で文学界にデビューしました。第二次世界大戦中はアメリカに亡命し、ここで彼女は『記憶の破片(Mémoires d’Hadrien)』という小説を執筆しました。この小説は、古代ローマ皇帝ハドリアヌスの回想録を描いたものであり、ユルスナールの代表作の一つとされています。

戦後、ユルスナールはフランスに帰国し、多くの文学作品を執筆し、フランス文学界で名声を確立しました。彼女の作品は、古代から現代までの幅広い時代とテーマを扱い、しばしば哲学的なテーマを探求する傾向があります。彼女の作品は、文学的な重厚さと精緻さ、洗練された語り口、そして人間の本質についての深い洞察力で知られています。

ユルスナールは、1980年にアカデミー・フランセーズのメンバーに選ばれ、フランス文学界で最高の栄誉の一つであるレジオンドヌール勲章を受賞しました。彼女は1992年12月17日にアメリカ合衆国メイン州で亡くなり、フランスのパリ市内にあるモンパルナス墓地に埋葬されました。

作家としてのマルグリット・ユルスナール (Marguerite Yourcenar)と作品の特徴

マルグリット・ユルスナールは、文学において繊細かつ厳密な表現を特徴としたフランスの小説家・評論家である。彼女は、ユネスコ文学賞などの多くの文学賞を受賞し、20世紀フランス文学の巨匠の1人として高く評価されている。

ユルスナールの作品には、古代ローマの皇帝ハドリアヌスの回想録を描いた『ハドリアヌスの思い出』、植物学者であり旅人でもあったアンドレ・テーアンの生涯を描いた『帝国の瞳』、フランドル地方を舞台にした16世紀の家族の物語である『瞑想』などがある。彼女の作品は、倫理的なテーマや哲学的な問題、そして普遍的な人間の悩みを扱っており、人間性についての深い洞察を示している。

ユルスナールは、人間性や自然、宗教、政治、文化の関係など、広範囲にわたるテーマを掘り下げている。彼女は、ヒューマニズムや倫理的な問題に深い関心を持ち、自己の思考によって形成される哲学的な態度を表現することが特徴的である。

また、ユルスナールは、人間の内面を描写することに長けており、人物描写に細部まで注意を払っている。彼女の作品には、複雑な人間関係、感情、人生の苦悩、悲しみなどが描かれ、深い共感を呼び起こす。

ユルスナールの作品は、時代や国境を超えて読み継がれ、多くの読者に愛されている。彼女は、女性作家として成功を収め、文学界において重要な地位を占めている。

マルグリット・ユルスナール (Marguerite Yourcenar)の代表作品

『ハドリアヌスの思い出』(原題:Mémoires d’Hadrien)

古代ローマ皇帝ハドリアヌスの回想録という形式で書かれた小説です。主人公のハドリアヌスが自身の人生を振り返り、権力や愛、死といったテーマを深く掘り下げています。また、古代ローマの政治や文化、宗教などの描写が詳細に綴られており、歴史的な興味をそそる作品となっています。

『アレクシス、あるいは若い時代』(原題:Alexis ou le Traité du vain combat)

主人公のアレクシスが、自らの人生を振り返りながら、若かりし頃の恋愛や友情、芸術に対する情熱といった様々な体験を回想する物語です。哲学的なテーマが多く取り上げられており、人生や死、美学、人間関係といったものについて深く考察されています。

『北極星』(原題:L’Œuvre au noir)

16世紀のフランドルを舞台に、自由思想家の生涯を描いた歴史小説です。主人公は神学的な研究をしていたが、やがて教会の束縛から解放され自由思想家として活動します。宗教的な問題に対する批判的な視点があり、自由思想や個人の自由に関する問題について深く考えることができます。

『自然と時間との対話』(原題:Les Yeux ouverts)

エッセイ集であり、自然に対する愛と尊敬、哲学的な思考、個人的な回想、文学の考察などが綴られています。ユルスナールが愛した自然や美学に関する考察や、歴史上の人物や作品に対する洞察力の高さが特徴的です。また、ユルスナール自身の生き方や思考に関するインスピレーションを与えることもある作品として知られています。

マルグリット・ユルスナール (Marguerite Yourcenar)に対する評価と後世や社会への影響

マルグリット・ユルスナールは、世界的に高い評価を得た作家の一人です。彼女の作品は、個人的な内省や哲学的思考、そして人間の苦悩を深く掘り下げたものであり、読者に強い共感や感銘を与えました。

特に、『ハドリアヌスの思い出』は、人生とは何か、歴史とは何かといった問いに深く迫る内容であり、世界的な名作として高い評価を受けています。また、ユルスナールは、フランス語圏の女性作家としては初めてアカデミー・フランセーズの会員に選出されるなど、その功績は広く認められています。

彼女の作品は、歴史的な背景を緻密に描写することで、読者に深い洞察や理解を与えるものが多く、後世の作家たちにも大きな影響を与えました。また、彼女自身も多くの文学賞を受賞し、フランス文学界において不動の地位を築きました。

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