純文学の定義
文学的価値を重視するのが純文学
純文学とは、芸術的な価値を重視し、物語や描写などの文学的要素を主体としている文学のことを指します。純文学は、文学作品そのものが芸術的な価値を持つことを目的とし、社会的なメッセージや教訓を伝えることよりも、文学的な表現に重きを置きます。
一方、商業的な要素や大衆的な娯楽性を重視する文学は、大衆文学やエンターテインメント文学と呼ばれることがあります。
純文学の定義には、文学作品が芸術的な価値を持つことが重要な要素となっているため、その評価は人によって異なる場合があります。しかし、純文学は一般的に、文学的な表現の高さ、テーマの深さ、人間性の描写などが重視され、多くの文学賞や批評家から高く評価されることがあります。
芥川賞作品は純文学
芥川賞は、純文学の代表的な作家である芥川龍之介の業績を讃えるために創設された文学賞です。純文学は、芸術的な価値が高く、作家の個性が表現された、普遍的な価値を持つ文学作品とされています。そのため、芥川賞は、純文学の分野で活躍する作家や作品を顕彰することを目的としています。
一方、直木賞は、直木三十五を顕彰するために創設された文学賞で、純文学の分野に限定されず、大衆文学やエンターテインメント文学なども対象としています。大衆文学は、広い層の読者に向けて、わかりやすく、面白い物語を描くことを目的とした文学作品で、純文学と比較すると、ストーリーやキャラクター性が強調されることが多いです。そのため、直木賞は、広く多様な文学作品を対象とし、大衆文学やエンターテインメント文学を含め、文学作品の幅広い分野での顕彰を目的としています。
そのため、芥川賞受賞ないし候補作品は純文学、直木賞受賞ないし候補作品は大衆文学と分類することも可能です。
五大文芸誌に掲載していれば純文学
現代の日本文学界には、五大文芸誌と呼ばれる文芸誌があります。それが、「文學界(文芸春秋社)」「新潮(新潮社)」「群像(講談社)」「すばる(集英社)」「文藝(河出書房新社)」の5つです。これらの文芸誌は先端的・実験的な作品が中心に掲載されており、芥川賞の受賞作品の多くもこの5つの文芸誌で発表されたものの中から選ばれる傾向にあります。
この五大文芸誌に掲載されている作品もまた、純文学のジャンルに属していると考えることができます。
純文学の新人賞について
純文学の新人賞には上記五大文芸誌が主催する5つの新人賞(文藝賞、すばる文学賞、新潮新人賞、文學界新人賞、群像新人文学賞)に加え、筑摩書房の主催する太宰治賞があります。これら6つの新人賞からデビューした作家・作品は、純文学作家・純文学作品であるといえます。しかし、純文学の新人賞からデビューし、その後大衆文学の賞をとったり、大衆小説作家へと転向する作家もいます。
たとえば、「パレード」「国宝」「悪人」「東京湾景」などの作品で知られる吉田修一は、文学界の文学界新人賞でデビューし「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞しましたが、「パレード」という作品で山本周五郎賞という大衆文学の賞も受賞し、純文学・大衆文学いずれの作品も発表しつづけています。
おすすめ・有名な純文学作品
世の中にはたくさんの純文学作品がありますが、ここでは純文学作品の中でも特によく知られているもの、できれば読んでおきたいものをご紹介します。
日本語で書かれた純文学作品
- 二葉亭四迷「浮雲」
- 田山花袋「布団」
- 夏目漱石「こころ」
- 森鴎外「舞姫」
- 川端康成「雪国」
- 三島由紀夫「金閣寺」
- 太宰治「人間失格」
- 尾崎紅葉「金色夜叉」
- 永井荷風「濹東奇譚」
- 小林薪「蟹工船」
- 梶井基次郎「檸檬」
- 谷崎潤一郎「春琴抄」
- 井伏鱒二「山椒魚」
- 芥川龍之介「羅生門」
- 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
- 志賀直哉「暗夜行路」
- 有島武郎「或る女」
- 坂口安吾「堕落論」
- 堀辰雄「風立ちぬ」
- 大江健三郎「死者の奢り」
- 村上春樹「風の歌を聴け」
- 村上龍「限りなく透明に近いブルー」
- 保坂和志「猫に時間の流れる」
- 川上未映子「乳と卵」
- 村田沙耶香「コンビニ人間」
- 又吉直樹「火花」
- 平野敬一郎「日蝕」
- 中村文則「土の中の子供」
- 遠藤周作「沈黙」
- 中上健次「十九歳の地図」
- 山田詠美「ベッドタイムアイズ」
- 綿矢りさ「インストール」
- 山崎ナオコーラ「人のセックスを笑うな」
- 西村賢太「苦役列車」
外国語で書かれた純文学作品
- サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」
- ガブリエル・ガルシア・マルケス「百年の孤独」
- ヘミングウェイ「老人と海」
- アルベール・カミュ「異邦人」
- フランツ・カフカ「変身」
- トルストイ「アンナ・カレーニナ」
- メルヴィル「白鯨」
- ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」
- エミリー・ブロンテ「嵐が丘」
- ナボコフ「ロリータ」
- ツルゲーネフ「初恋」
- ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ」
- スタンダール「赤と黒」
- トーマス・マン「魔の山」
- ヴィクトル・ユーゴー「レ・ミゼラブル」
- フローベール「ボヴァリー夫人」
- バルザック「ゴリオ爺さん」
- フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」
- ジェーン・オースティン「高慢と偏見」
- ディケンズ「大いなる遺産」
- フォークナー「八月の光」